UPDATE
おつかれさまです、kabutomです。
2021年12月3日・4日・5日、『クラッシュ・ロワイヤル』の公式eスポーツ大会『クラロワリーグ世界一決定戦 2021』がオンラインで開催され、日本のMugi(むぎ)選手が優勝しました。
これは彼自身にとっても、クラロワの日本人選手としても初となる偉業の達成です。
今回は『クラロワリーグ世界一決定戦 2021』の大会結果と、新世界チャンピオンMugi(むぎ)選手が誕生するまでの軌跡をレポートします。
界隈の方だけでなく、クラロワをご存じない方や、それこそむぎ選手のご家族が読んでも分かるような説明を心掛けました。
それでは、どうぞ。
この記事の目次
『クラロワリーグ世界一決定戦 2021』の概要
『クラロワリーグ世界一決定戦 2021』とは、クラロワの公式eスポーツ大会『クラロワリーグ 2021』の年間決勝に位置する世界大会です。
2020年まではチーム戦形式でしたが、今年はオープン参加の個人戦形式での開催。
1年がかりで行われたレギュラーシーズンの獲得ポイント上位24選手と、『ラストチャンス予選』を勝ち上がった8選手、計32人のトッププレイヤーが雌雄を決します。
Supercellの公式大会としては、2017年以来となる個人でのクラロワ世界一を決める特別な大会でした。
大会ルール
主だったルールは、以下の通りになります。
- DAY 1:シングルエリミネーション方式トーナメント(※敗者復活ナシ)
- DAY 2・3:ダブルエリミネーション方式トーナメント(※敗者復活アリ)
- 試合ルール:「デュエル」・BO3・デッキ事前提出不要
- 開催地:オンラインでの開催(選手にはカメラ設置が義務付けられた)
賞金
年間の賞金総額は1,600,000ドル(約1.8億円)以上、世界一決定戦の優勝賞金は200,000ドル(約2,200万円)というクラロワeスポーツ史上最高額が設定されました。
ファイナリスト一覧(全32選手)
世界一決定戦2021の出場選手は、この32人。プレイスキルが高いのは当然として、長くタフだった戦いをみごとに勝ち抜き、”厳選”された世界中の猛者たちが揃いました。
まぎれもなく2021年のクラロワ界で最強の32人です。
- Mohamed Light (エジプト)
- LucasXGamer (ブラジル)
- SandBox (韓国)
- Viiper (フランス)
- Samuel Bassotto (ブラジル)
- Rubén (スペイン)
- Anaban (メキシコ)
- Morten (ドイツ)
- Higher (中国)
- Pandora (日本)
- Mugi (日本)
- KK19212 (日本)
- Hazard (ロシア)
- Famouskid (シンガポール)
- Airsurfer (アメリカ)
- Miniminter (ペルー)
- FurkanArabacı (トルコ)
- Line (韓国)
- Wallace (ブラジル)
- Guriko (日本)
- Surg TS (ブラジル)
- ReicherT (ドイツ)
- Michifu (スペイン)
- Lciop (中国)
- Kodigo (コロンビア)
- Vitor75 (ポルトガル)
- Framsito (アルゼンチン)
- BobTheRock (オランダ)
- Hajime (日本)
- Chief Keef (イタリア)
- Hasiel19 (メキシコ)
- RAD (日本)
世界の最注目選手かつ優勝候補筆頭は、年間ポイントランキングを独走し”2021年最強の男”と目されるMohamed Light選手。
「はたして彼を止める選手は現れるのか?」が注目ポイントでした。
そして、日本からは国別で最多となる6人もの選手が参戦。
ランキング順に、Pandora選手・Mugi選手・KK選手・Guriko選手・Hajime選手・RAD選手(SmashlogTVのレギュラーであるRAD選手もです!)。
日本コミュニティは悲願達成を予感し、大会前から期待が膨らんでおりました。
DAY 1(2021年12月3日)
対戦順 | 選手名 | スコア | 選手名 |
---|---|---|---|
Match1 | RAD | 0-2 | Mohamed Light |
Match2 | FurkanArabacı | 0-2 | TRB|Miniminter |
Match3 | Kodigo | 1-2 | SK|Morten |
Match4 | Nova|Lciop | 2-0 | Higher |
Match5 | Hajime | 2-1 | Viiper |
Match6 | Guriko | 1-2 | Khazardy |
Match7 | Bobtherock | 0-2 | Samuel Bassotto |
Match8 | Surg TS | 2-1 | KK |
Match9 | Hasiel19 | 2-0 | LucasXGamer |
Match10 | Line | 2-1 | Airsurfer |
Match11 | Vitor75 | 2-1 | TRB|Anaban | Match12 | Michifu | 2-1 | Pandora | Match13 | MCES Keef | 1-2 | TRB|SandBox | Match14 | TRB|Wallace | 2-0 | Famouskid | Match15 | Framsito | 2-0 | TQ|Ruben | Match16 | ReicherT | 1-2 | Mugi |
32人のうち16人が大会を去ることになる、明暗濃き大会初日。
Mohamed Light選手、TRB|SandBox選手といった優勝候補が順当に勝つ一方で、第2シードのLucasXGamer選手や第4シードのViiper選手が敗れたり、昨年のMVPであるTQ|Ruben選手までストレート負けを喫するなど、波乱が続出。
6人が出場した日本選手たちも、RAD選手・Guriko選手・KK選手・Pandora選手の4人が惜敗。2日目に進んだHajime選手・Mugi選手の2人に希望を託す展開となりました。
DAY 2(2021年12月4日)
対戦順 | 選手名 | スコア | 選手名 |
---|---|---|---|
Match17 | TRB|Miniminter | 0-2 | Mohamed Light |
Match18 | Nova Lciop | 2-1 | SK|Morten |
Match19 | Khazardy | 2-0 | Hajime |
Match20 | Surg TS | 2-0 | Samuel Bassotto |
Match21 | Line | 0-2 | Hasiel19 |
Match22 | Michifu | 2-1 | Vitor75 |
Match23 | TRB|Wallace | 0-2 | TRB|SandBox |
Match24 | Mugi | 2-0 | Framsito |
Match25 | SK|Morten | 2-1 | TRB|Miniminter |
Match26 | Samuel Bassotto | 2-0 | Hajime |
Match27 | Vitor75 | 1-2 | Line | Match28 | Framsito | 2-1 | TRB|Wallace | Match29 | Nova|Lciop | 1-2 | Mohamed Light | Match30 | Surg TS | 1-2 | Khazardy | Match31 | Michifu | 2-0 | Hasiel19 | Match32 | Mugi | 2-0 | TRB|SandBox |
2日目からは敗者復活アリのダブルエリミネーション方式トーナメントで進みます。
今年で4年連続の公式世界大会出場となるNova|Lciop選手の揺るがぬ強さ。ノーマークに近かったHasiel19選手の、ふてぶてしいまでの余裕。
勝ってはしゃぐ選手。負けても相手にエールを送れる選手。悲喜こもごもを残しながら、試合が重ねられていきます。
日本のHajime選手は、Khazardy選手・Samuel Bassotto選手との”世界一位経験者対決”に続けて敗れ、挑戦はここまで。ベスト16で大会を後にしました。
Mugi選手は、感情表現豊かなFramsito選手、優勝候補の1人であるTRB|SandBox選手に連勝し、アッパーブラケットのベスト4に勝ち上がりました。
DAY 3(2021年12月5日)
対戦順 | 選手名 | スコア | 選手名 |
---|---|---|---|
Match33 | SK|Morten | 2-1 | TRB|SandBox |
Match34 | Samuel Bassotto | 0-2 | Hasiel19 |
Match35 | Line | 2-0 | Surg TS |
Match36 | Framsito | 1-2 | Nova|Lciop |
Match37 | Hasiel19 | 0-2 | SK|Morten |
Match38 | Nova|Lciop | 1-2 | Line |
Match39 | Khazardy | 2-1 | Mohamed Light |
Match40 | Mugi | 2-1 | Michifu |
Match41 | SK|Morten | 0-2 | Mohamed Light |
Match42 | Line | 2-1 | Michifu |
Match43 | Mugi | 2-0 | Khazardy | Match44 | Line | 0-2 | Mohamed Light | Match45 | Mohamed Light | 2-0 | Khazardy | Match46 | Mohamed Light | 1-2 | Mugi(優勝) |
運命の最終日。
決勝戦グランドファイナルはアッパーブラケットの勝者とロウワーブラケットの勝者が対決する訳ですが、アッパーブラケット側には”決勝での敗者復活”権が1度与えられるルール。
つまり、アッパーブラケットで勝ち残ることが優勝への最短距離だったのです。
その非常に重要なアッパーブラケットの決勝(Match 43)、Mugi vs Khazardy戦に勝利したのは、日本のMugi選手。
特にGame1、彼のイメージになく今大会でも使用率がとても低いゴーレムを主軸としたデッキで相手を圧倒したシーンには世界が驚かされました。
ロウワーブラケットの勝者となったのは、やはりと言うべきか優勝候補筆頭のMohamed Light選手。
Match 39でKhazardy選手に敗れてロウワーブラケットに落ちたものの、ロウワー決勝(Match 45)でそのKhazardy選手にリベンジを果たしての決勝戦進出は、まさに”王”の道でした。
#クラロワ 公式世界大会の歴代チャンピオン
2017 #CRCC 🏆SergioRamos
2018 #CRL 🏆Nova Esports
2019 #CRL 🏆Team Liquid
2020 #CRL 🏆Team Queso2021 #CRL 🏆Mugi 🆚 Mohamed Light
…Who will win?🔥📺https://t.co/Lr10KGzRnG https://t.co/zSrDwy1ucL pic.twitter.com/hIR9I4S3y1
— kabutom🙂クラロワ (@kabutom1938) December 5, 2021
決勝戦グランドファイナル
そして、決勝戦グランドファイナル(Match 46)。カギとなったのはGame2でした。
Game1でワンサイドに近い完勝を決めたMohamed Light選手はGame2もいい出だし。どうやら勝負は振出しに戻りそうだ…といった空気が漂い出す中でMugi選手が静かに反撃開始。
タワーダメージを左右に均等に分散させつつ、キング起動も成功させギリギリまで許容してチャンスを待ち、ここぞというタイミングでロイジャイ+ライトニングの攻撃を通す。1-0で勝つプランで立ち回り、見事逆転勝利を勝ち取りました。
そしてこの流れのままGame3でバルーン・フリーズ戦術を決め切って、Mugi選手が栄冠に輝いたのです。
優勝者インタビュー
Q. むぎ選手おめでとうございます。まず最初にお聞きしたいのですが、世界一のプレイヤーになってどんな気分でしょうか?
A. いやもうマジでめちゃくちゃうれしいです。
Q. 最後に”ランバー・バルーン・フリーズ”デッキを使いましたが、なぜそのデッキを使うことを選んだのですか?
A. そうですね。直前に話し合って、なんかもう時間がなくて緊急で決めたんですけど、それがたまたま刺さったっていう感じです。はい。
Q. 賞金の2000万円はどう使う予定ですか?
A. 特に決めてないので、今のところは貯金かなと思います。
Q. 最後の質問です。来年2022年のむぎ選手に何を期待できますか?
A. 来年はチャンピオンとして、今以上に強く、立ちはだかりたいなと思います。
新・世界チャンピオン”むぎ”選手が誕生するまでの軌跡
最後に、むぎ選手が世界チャンピオンになるまでの軌跡をご紹介していきます。
ミステリアスな最強プレイヤー時代
世界1位フィニッシュ🤩 pic.twitter.com/wfSO6bsRa9
— むぎ (@Mutyan_cr) May 6, 2019
国内外のクラロワ界が「むぎ」を”知った”のは2019年6月のことでした。
ゲーム内の1v1ランキングで、なんと世界1位を獲得!これは日本人プレイヤーとして、JACK選手(2018年1月達成)に続く2人目の快挙でした。
むぎ選手の試合のリプレイ動画が出回るようになり、彼の高回転デッキを中心とした正確無比なプレイングが称賛されるようになるまでそう時間はかかりませんでした。
しかし、この時点の彼はSNS活動やオフライン大会などにあまり積極的ではなく、あくまでミステリアスな存在だったのです(Twitterアイコンが女性タレントの写真だったことから、”むぎ=女性”説が国内外に流れたほど)。
PONOS加入からの大躍進
そんなむぎ選手が表舞台にさっそうと現れたのは2020年8月。
クラロワリーグ・イーストの日本プロチームPONOSでプロデビューを果たすや”プロの壁”などどこ吹く風。みるみる頭角を現しPONOS快進撃(レギュラーシーズン12勝2敗!)の立役者となります。
個人としても、リーグ表彰で三冠(ベスト新人・ベスト1v1・MVP)を受賞する無双ぶりを見せました。
『CRL 世界一決定戦 2020』成しえなかった優勝
順風満帆に思えたむぎ選手でしたが2020年12月、苦い味を知ることになります。
初めて出場した公式世界大会『クラロワリーグ世界一決定戦2020』の準決勝で、Team QuesoのエースRuben選手と2度対戦し、2度とも敗北を喫したのです。チームもここで敗れました。
優勝したのはそのTeam Queso。MVPに選ばれたのは、1v1で大会6戦全勝と”エースとしての仕事”を完璧にやり切ったRuben選手でした。
CRL2021は個人戦へ
年が変わって2021年。クラロワリーグは大きく仕組みが変わって、チーム戦から個人戦へ生まれ変わりました。
プロアマの垣根なく実力のみがものをいうルールになったということで、むぎ選手には2020年以上の期待が寄せられることになりました。
しかし、8度のマンスリー大会で一度も決勝大会(ベスト8)に「むぎ」の名は見られずじまいでした。
マルチやスイスラウンドの累積獲得ポイントで世界大会出場こそ決めはしましたが、”プレイスキルこそ折り紙付きだけれど、今年のリーグ・フォーマットへの適応や、大舞台での勝負強さの面ですこし疑問符がつく選手”開幕前の彼にはそういう評価もあったのです。
『世界一決定戦 2021』完璧な優勝
そうして迎えた2021年の世界一決定戦。
むぎ選手は、今年急成長した優勝候補TRB|SandBox選手や、日本選手2人を倒すなど今大会絶好調のKhazardy選手(2019年チーム世界一経験者)、”2021年最強”と目されるMohamed Light選手ら、世界を代表するエースたちを直接対決で破って優勝してみせました。
大会前に不安視された要素全てを吹き飛ばして、強いやつらを全員なぎ倒しての誰も文句のつけようがない完璧な優勝劇がここに!
アナリストを任せてくれたむぎに感謝
泣いてるのバレてるよ pic.twitter.com/2Vm2k1LqCT— MUGIMURA (@ARIMURAisGOD) December 5, 2021
勝因の一つは、アナリストに信頼するARIMURA選手を迎え、戦う準備を万端にしたことでした。
クラロワは基本的に一人でプレイするゲームですが、競技シーンを勝ち抜く上では周囲の専門的な力を借りて、自分が最もパフォーマンスを発揮できる協力体制を築くことも大事な要素なのです。
今回のむぎ選手の勝利は彼にとって大きかっただけでなく、”プレイヤー数は多いけれど世界では勝てない弱小国”という立ち位置から出発した日本クラロワ界にとっての「悲願」と言ってもいい、待望の世界一でもありました。
”AI”むぎ選手が見せた優勝の瞬間
日本のクラロワ競技シーンを実況席からずっと見守ってきた岸大河さん、日本プロ選手一期生でPONOSのチームメイトでもあった解説のライキジョーンズ選手、そしてライブ観戦中の約2万5千人の日本の視聴者が感極まる中で、むぎ選手がやったことは…。
ぬいぐるみのプリンスの槍で突進ポーズを愉快に演じたのち、勝利の雄たけびを上げ、Twitterで勝利報告することでした。
よっしゃあ無敗世界1位!!!!🥇
応援してくれた方々ありがとうございます好きですみんな😭— むぎ (@Mutyan_cr) December 5, 2021
何その軽さ!感動をかえして!笑、と涙目の筆者は正直思いました。敗北にうなだれていたMohamed Light選手ですら、ついクスっとしてしまっているじゃないですかと。
さっきまでの緊迫感どこ行った!
ワンテンポ遅れて気づいたのは、むぎ選手がこんなに感情をあらわにはしゃいだ姿を過去見た事があったろうかということでした。
緻密なプレイとクールな振る舞いから”AI”(人工知能)とも称される17歳の彼の、あれは照れ隠しだったのかもしれません。
あらためておめでとうございます、むぎ選手。そして本当にありがとう。
リーグ情報
クラロワリーグ(Clash Royale League)2021
◆ ◆ ◆
Congratulations!